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腰痛に関するリハビリテーションRehabilitation

 運動療法の有用性については多くの報告があるが,長期介入での有用性について明らかではなく,今後さらなる研究が必要な分野である.


急性腰痛に対する運動療法

 急性腰痛に対する運動療法のRCTのメタアナリシスによると,運動療法は無治療群や,他の保存的治療と比べ疼痛改善が同様であり81,腰椎関連機能障害や健康状態,患者満足度などについても運動療法の効果を認めなかった82


亜急性腰痛に対する運動療法

 運動療法とプラセボ,あるいは一般的な保存的治療の比較では,運動療法の腰痛に対する中等度の効果82や運動療法の復職に対する効果が示された81.しかし,痛みや機能障害の改善には効果が不明であった81.Cochraneレビューでは,亜急性期において理学療法を含む集学的生物心理社会学的リハビリテーションは一般的な治療よりも腰痛,腰痛改善機能障害,就労状態に対する改善が期待できるが,質が低い研究に基づいているため,エビデンスレベルは低い83


慢性腰痛に対する運動療法

 慢性腰痛患者のRCTでは,運動療法が腰椎可動域や機能障害の改善に効果があり84,疼痛,運動機能,健康状態,筋力及び持久力も改善した85.慢性腰痛患者のQOLに関するRCTでも運動療法はQOL改善に効果があった86.メタアナリシスでも,慢性腰痛に対する運動療法は疼痛改善,機能障害やQOL改善に対しても効果があった87,88.日本における全国的なRCTでは運動群(体幹筋力強化とストレッチを10回,1日最低2セット)と対照群(NSAIDs内服)を比較したところ,腰痛の強さやFFD(finger floor distance)に差はなかったが,腰痛関連QOLが運動群で有意に改善しており,国内においても慢性腰痛に対する運動療法の効果が示された89.したがって,慢性腰痛に対する運動療法は強く推奨される保存的治療のひとつといえる90.ただし,現時点では効果的な運動療法の種類を明確に示す論文はなく,運動療法の長期的な効果は明らかになっていない91.15編のシステマティックレビューによれば,積極的理学療法のプログラムは治療介入後6ヶ月以内までの慢性腰痛の減少には有効であったが,1年後など長期的な有用性に関しては,論文によって様々であり,長期介入での有用性は認められなかった92.今後は,慢性腰痛に対する運動療法の長期有効性をさらに示すために,統一したプログラムで長期の経過観察が必要である.


有害事象と費用対効果

 運動療法の有害事象について,全身運動による合併症や有害事象はない,もしくは稀であると報告され,運動療法の有害事象を明確に述べている論文はない82,87,93.ただし対象患者や基礎疾患,運動の内容によっては全身状態悪化や腰痛悪化など有害事象発生のリスクも懸念される87.一方で,最近注目されている費用対効果に関し,運動療法のRCTでQOL改善効果とQALYについて述べた研究があるが86,運動療法そのものの費用対効果について明らかにした質の高い報告はない.したがって,今後は慢性腰痛に対する長期運動療法の効果を検証する際には,患者利益の観点から有害事象について,また医療費削減のためにも費用対効果に関する研究が待たれる.


腰痛の認知行動療法

 認知行動療法は,慢性腰痛患者の負情動,ストレス,心理状態,破局的思考に焦点を当て,「痛みの捉え方」や「対処行動」を適応的な方向へと変容させることを目的とする治療法である.認知行動療法は薬物療法や運動療法と組み合わせて実施をすることが特に効果が高いとされており,慢性腰痛だけでなく,うつ病,不安障害,パニック障害,不眠症,依存症などに有効性が検証され,効果が認められている.  慢性腰痛に苦しむ人は器質的な疾患だけでなく,仕事,対人関係,家族関係などに起因する心理社会的なストレスによって腰痛が維持,強化されていることも多く,物事の認知の仕方の癖や,考え方に偏りがみられることがある.このような場合,認知行動療法では,痛みそのものではなく痛みによって引き起こされる情動や不適応な対処行動に焦点を当て,変容を目指すことで,疼痛軽減をはかる.  手法は認知の再構成,マインドフルネス,ペーシング,漸進的筋弛緩法など様々であるが,患者ごとに組み合わせは異なる.個人の成育歴や,生活環境,家族・職場の軋轢,精神疾患,発達障害,不登校など多くの背景要因が複雑に影響し合っているため,医師,看護師,臨床心理士等が協力し,詳細な問診により治療方針を決める必要がある.