日本腰痛学会日本腰痛学会

メニュー

腰痛に関する保存治療Conservative treatment

薬物療法

 薬物療法は疼痛軽減効果を有しており,機能改善に有用である.腰痛に対する薬剤の使い分けにおいて,急性腰痛,慢性腰痛,坐骨神経痛を鑑別することが重要である.以下に,それぞれの疼痛に対する推奨薬をエビデンスとともに掲載しておく(腰痛診療ガイドライン2019より抜粋).



物理・装具療法

 腰痛の治療に対する物理・装具療法のなかには有用なものも存在するが,高品質な研究は少なく,推奨される治療法は限定的である.以下に各治療法のエビデンスの強さと推奨度を示す(腰痛診療ガイドライン2019より抜粋)



インターベンション治療

 


神経ブロック

a. 仙骨硬膜外ブロック

 仙骨硬膜外ブロックは腰下肢痛の有無にかかわらず椎間板ヘルニアおよび椎間板性腰痛の患者における短期(6ヶ月未満)および長期(6ヶ月以上)の慢性疼痛改善にエビデンスがあり,椎弓切除後および腰部脊柱管狭窄症患者においてはそれよりも若干弱いものの疼痛改善のエビデンスがある64.

b. 経椎弓間硬膜外ブロック

 下肢痛を呈する慢性腰痛患者に対する経椎弓間腰椎硬膜外注射の効果について,短期では中等度の鎮痛効果がある65.また,下肢痛の有無に関わらず,脊柱管狭窄に伴う慢性腰痛には経椎弓間腰椎硬膜外注射は有効であるとする一方で,ステロイドの添加は局所麻酔薬のみの場合に比し鎮痛効果やオピオイド使用量,ODIなどに有意差はなかった66

c. 神経根ブロック

 神経根性痛に対しては経椎弓間腰椎硬膜外注射,及び腰椎の神経根ブロックの短期間効果には高いエビデンスがあったと報告している761,67.一方,下位腰椎を中心とする腰椎椎間板は解剖学的に直近の脊髄神経のほか,交感神経幹を介してL2脊髄神経を優位とする上位腰椎の脊髄神経に支配されていることから,L2神経根ブロックの椎間板性腰痛への応用が報告されている.椎間板性腰痛68例を2群に分け,L2神経根ブロックもしくはL4/L5神経根ブロックを行った研究では,前者の効果期間は平均13日と,後者の8日間を上回っていた68


椎間関節造影・注射

 腰痛の一因と考えられている椎間関節の関与について,一連の研究において椎間関節に対する診断的ブロックの再現性は低く,特異度が62%と低い一方で偽陽性率が38%と高いことから,椎間関節注射そのものが信頼できる検査ではないとしている59.一方で,椎間関節性疼痛に対して椎間関節神経ブロックを行った症例のうち,80%以上の疼痛軽快が得られた症例の89.5%の症例で2年後でも腰痛の改善が認められると報告された60.この報告には対照群が設定されていないため,結果の解釈には慎重になる必要はあるものの,椎間関節及び神経ブロック注射の有効性については注目すべきトピックである.



注射療法

a. 関節注射(椎間関節,仙腸関節)

 椎間関節由来の腰痛や仙腸関節障害の疼痛に対しては,今のところ質の高いRCTはほとんどなく,椎間関節注射や仙腸関節内注射の有用性を明言するにはエビデンスが不足している.本治療の有効性に関しては,今後質の高い研究が必要である.

b. 椎間板内注射

 椎間板内注射に関してのRCTにおいて,診断的椎間板造影により診断された椎間板性腰痛患者に生理食塩水もしくはステロイドを投与して比較検討した結果,施行後3および6ヶ月のいずれでも疼痛に関するvisual analogue scale (VAS)はステロイド投与群において,生理食塩水投与群と比較して有意な改善を認めた.ODIで評価した場合であっても,施行後ODIが有意にステロイド投与群で上昇していた69..文献数は少なく有効性に関しては高いエビデンスとしては捉えにくいが,椎間板内注射は椎間板性腰痛に対して短期・中期的に有用である可能性が示されている.


その他

a. 脊髄刺激療法(spinal cord stimulation : SCS)

 腰椎術後の遺残腰痛(failed back surgery syndrome : FBSS)による慢性腰痛患者に対するSCSと保存的治療のRCTよると,SCSを実施した群において,6ヶ月での鎮痛効果,QOLスコアが有意に優れており,この効果は24ヶ月持続していた70..また,FBSSにおける手術的治療とSCSの治療効果を検討した後ろ向き介入研究では,再手術に伴う医療コストや入院期間等の点においてSCSが優れていたと報告している71.しかし,現状では治療の積極的な第一選択肢と言うよりはFBSS症例に対する選択肢のひとつとして扱われるのが現実的なところである.

b. 脱神経療法

 椎間関節由来慢性腰痛に対するラジオ波焼灼脱神経化についてのシステマティックレビューによると,脱神経化がプラセボやステロイド注射と比し有意な鎮痛効果を示した72.このことから,ラジオ波焼灼による脱神経化が椎間関節由来の慢性腰痛においては有効であり,ステロイド注射よりも効果があることが示された.

c. 末梢神経刺激(peripheral nerve field stimulation : PNFS)

 疼痛部位直近の皮下に電極を設置し,効果の確認後にSCSと同様に刺激器を皮下に埋め込むPNFSについて,慢性腰痛症例を対象とした他施設前向き試験によると,全例で疼痛及びADLスコアは改善し,NSAIDsやオピオイド製剤などの鎮痛薬処方量も有意に低下したと報告している73.