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外来診療のポイントKey points for outpatient treatment

① 危険信号(Red Flags)と神経症状に注意を払う

 腰痛患者の初診で最初に必要な診察手順は,注意深い問診と診察である.診断に際しては重篤な脊椎疾患(悪性腫瘍,感染,骨折)を見逃さないように.危険信号(Red Flags)を念頭に置いた問診・診察を行い,複数のRed Flagsがある場合は特に注意を払う.診断の手順としては,まずRed Flagsを有する重篤な腰痛疾患,神経症状を伴う腰痛,神経症状を伴わない腰痛に分類しトリアージする.


② 原疾患の特定を行い、治療(保存治療や手術治療)を実施する

 確定診断に至る各過程で最適の補助診断法を使用する.画像検査がその主幹であり、血液検査や各種ブロック、造影、筋電図などを組み合わせる。腰痛に対する外来治療は,薬物療法,物理・装具療法,運動療法がある。経過によっては手術療法が選択される。これらの補助尾診断法と治療の各論詳細は別項に示す。


③ 患者教育・自己管理を徹底する

 腰痛は単一の疾患単位ではなく症状名であることからも極めて多種多彩な疾患が原因となるが、その大多数の予後は良好である。一方、慢性腰痛患者の自然経過は急性腰痛に比べて不良であり、心理社会的要因はさらに腰痛の難治化に影響する。故に患者教育と自己管理がその解決に有用な手段であり、医師の指導に有益な基本知識のポイントを下記に示す。


  • ● 腰痛とは,「体幹後面に存在し,第12肋骨と殿溝下端の間にある,少なくとも1日以上継続する痛み.片側,または両側の下肢に放散する痛みを伴う場合も,伴わない場合もある」と部位に関して定義される.1
  • ● 腰痛の有症期間により,急性腰痛(発症からの期間が4週間未満),亜急性腰痛(発症からの期間が4週間以上,3ヶ月未満),慢性腰痛(発症からの期間が3ヶ月以上)の3つに大別される.2,3
  • ● 腰痛の原因は多種多様であり,脊椎由来,神経由来、内蔵由来,血管由来,心因性、その他に分類される。
  • ● 腰痛は腰椎から脳にいたるあらゆる部位で様々な病態が関与している.
  • ● 非特異的腰痛は未確立の疾患群を詰め込んだ症候群であり,未だ検討の余地が残るが、近年発表された本邦の整形外科専門医による腰痛の原因を詳細に調査した報告によれば,腰痛の原因の内訳は椎間板性22%,筋・筋膜性18%,椎間板性13%,狭窄症11%,椎間板ヘルニア7%,仙腸関節性6%などであった.75%以上で診断が可能性あり,診断不明の“非特異的腰痛”は,22%に過ぎなかった.4
  • ● 急性腰痛患者の自然経過は,自然軽快を示すことが多く,概ね良好である.5
  • ● 慢性腰痛患者の自然経過は,急性腰痛に比べて不良である.5
  • ● 心理社会的要因は,腰痛を遷延化させる。破局的思考(痛みの経験をネガティブに捉える傾向。痛みが頭から離れない「反芻」,痛みに対する「無力感」および痛みを大きく見積もる「拡大視」の三要素からなる.)が腰痛の経過不良と関連すると報告されている.6,7
  • ● 身体的・精神的に健康な生活習慣は,腰痛の予後によい.8-10
  • ● 低体重あるいは肥満のいずれでも腰痛発症のリスクと弱い関連が認められ,健康的な体重の管理が腰痛の予防には好ましい.11-16
  • ● 喫煙と飲酒は,腰痛発症のリスクや有病率との関連が指摘されている. 11,14,15,17,18
  • ● 日常的な運動実施群に比べ,普段運動していない群に腰痛発症リスクは増大する。11,13,19
  • ● 腰痛の予防には健康的な生活習慣と穏やかでストレスが少ない生活が推奨される.20,21
  • ● 身体的負荷の大きい重労働(運輸、清掃、看護、介護、農作業など)は,腰痛発症の危険因子であると考えられている.
  • ● 仕事や職場における心理社会的因子(仕事の満足度、単調さ、人間関係、仕事量、仕事能力への自己評価、うつ状態、社交性、恐怖回避思考など)は,腰痛発症や予後に関連するという報告がある.26,27
  • ● 心理社会的因子は,仕事,教育レベル,社会的身分,補償問題などの社会的因子,うつ に代表される心理的因子,そして,痛みに対する破局的思考や恐怖回避思考などの特徴的な思考や受動的コーピングなどの認知・行動に関する因子など多岐にわたり,これらの因子が独立あるいは相互に作用しているものと考えられる.7,28-35
  • ● 急性腰痛に対しては,安静よりも活動性維持の方が有用である.一方,坐骨神経痛を伴う腰痛では,安静と活動性維持に明らかな差はない。36-39
  • ● 腰痛患者に対して,患者教育(腰痛学級、小冊子、ビデオプログラム)と心理行動的アプローチ(認知行動療法)は有用である。40-42
  • ● 本邦では保険診療上は柔道整復師,あんまマッサージ師,指圧師,鍼灸師が医師の同意を得た場合以外では,非外傷性の腰痛や慢性腰痛に対する診療行為は行えないことになっている.
  • ● 腰痛予防に運動療法は有用である.43,44
  • ● 腰痛予防に認知行動療法は有用である.45
  • ● 職業性腰痛の予防には,運動と職場環境の改善(持ち上げ器具の使用や作業場の高さ調整など)が有用である.46,47
  • ● コルセットには,腰痛に対する直接的な予防効果はない.44,47